神奈川県水産技術センター 内水面試験場

ワカサギの採卵は大変・・・・・・

 芦之ノ湖漁業協同組合における従来の採卵方法 
搾出法by芦之湖漁協  神奈川県内の湖ではワカサギ資源を安定的に維持するために、年間10億粒もの卵からふ化した仔魚が放流されています。この際、自湖産もしくは他県産の種卵が利用されていますが、いずれにしても、これほどたくさんの種卵を生産するのは大変なことです。

 この一般的な手法は、まず、自然水域において産卵場に集まる親魚を捕獲して、陸上施設へ運びます。次に、これらオス・メスの一尾ずつから精子と卵を手作業により絞り出し、混ぜ合わせて受精させます(搾出法)。多くの時間と労力が必要なだけでなく、厳冬期の辛い作業です。

搾(さく)出法によるワカサギ卵の採卵(写真提供:芦之湖漁業協同組合)
搾出法by芦之湖漁協
革新的な芦之湖漁業協同組合の採卵方法!!
 
芦之湖漁業協同組合は長年にわたり、種卵生産・放流を行っています。これまで搾出法を用いていましたが、ごく最近になって漁協では、ワカサギも水槽内で自然産卵することを発見しました。これにより採卵方法が大きく変わろうとしています。
 そこで、芦之湖漁業協同組合で行われている水槽内自然産卵法を用いた種卵生産の概要を紹介します。
親魚を捕獲する定置網と親魚の回収風景。定置網は大場組合長の自作で、毎年のように改良が加えられています。(以下、芦之湖漁協にて撮影)
定置網 定置網 定置網
湖に定置網を設置して、親魚を捕獲する 捕獲した親魚を、毎朝ボートで回収しに行き、養魚場へ運ぶ。
収容作業 ワカサギ以外の魚などを選別します 産卵水槽内のワカサギ
養魚場内の屋内水槽に収容する。
ただし、産卵基質は入れない。 
ワカサギ以外の魚類や甲殻類などを取り除く。
流水で一昼夜、蓄養する。
夜間に親魚が水槽内で産卵・放精して受精が行われますが、産卵後死ぬ魚が多いです。
取り上げ作業
翌朝親魚を取り上げます 水槽内の魚を取り上げた後、受精卵を回収します   回収した受精卵は不粘着処理(卵が固まらないようにする処理)を施した後、孵化器に収容して管理する
この自然産卵法では、
1.親魚から卵と精子を搾り出す作業が全く省かれるので、労力が大幅に軽減される。
2.活卵率(発眼率)が飛躍的に高くなり、かつ安定的である。 
3.産卵後の親魚は生きているので、放流により再資源化が図れる。もしくは、出荷しても商 品価値が高い。
 など、従来の搾出法にはない多くのメリットを見いだすことができ、新たな採卵法として期待されています。
芦之湖漁業協同組合では、この方法によって、平成15年度は約 8.1億粒の種卵を生産しました。
付着沈性卵を産むにもかかわらず、基質を入れなくても受精卵が得られます。産卵・放精を誘発する要因は何でしょう?
水槽内では、はたして何が起こっているのでしょうか?生物学的に興味深い不明点も多々あります。同漁協では毎日、捕獲魚の塾度検査や採卵量、発眼率などを調べて、謎の解明に挑んでいます。また、当試験場も協力して水槽実験を行うなど、本手法の汎用性を共に検討しています。
今後、ワカサギの自然産卵法が確立され、この技術が他湖でも普及することだけでなく、他魚種への応用も期待されます。  
(参考文献)
橘川(2003):広報ないすいめん.No.31, 10-16
橘川ら(2003):SUISANZOSHOKU 51(4), 401-405

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