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全国湖沼河川養殖研究会 第74回大会 日本におけるカワウの分布拡大と被害について

    日本野鳥の会研究センター 成末雅恵

カワウという鳥
 カワウは、川鵜と書き、日本やユーラシア大陸、アフリカ、オセアニアなどに広く分布するペリカンの仲間の水鳥です。かれらの食物資源は、ほとんど魚であり、波の穏やかな内湾や河川の流域、湖沼などに数メートルほど潜って、魚をとって暮らしています。またカワウの体重は、約2キロほどで、300グラムから500グラムの魚を採食すると言われています。
 「鵜」の付く地名を検索してみると、北海道から九州まで、80か所もの地名がみられます。内湾や湖沼近くには、鵜の付く地名が多く、このような場所は昔カワウが多かったことを表していると思われます。北海道や外洋に面した場所はカワウではなく、その近縁の海鵜(ウミウ)のいた場所だったと思われます。
恵みの魚
 鵜飼いは、カワウやウミウを巧みに操って、魚を採る伝統的な漁法の一つです。鵜飼いの起源は古く、インド東北部からベトナム、中国などアジアで広く行われて来ました。一説には、稲作農業と共に広がったのではないかという見方もあります。また、千葉県の鵜の森にあった大巌寺には、400年前から鵜が繁殖し、住民はカワウを大切にしてきました。近くにすんでいた知人は、ときどきザルを持って魚を拾いに行ったそうです。私たちも、浜離宮庭園でカワウのねぐらを調査していた時に、長さ30センチもある生きのいいボラやコイなどが頭上から降ってくる経験を何度もしました。
糞の恩恵
 ウの糞は、チッソやリンなどをたくさん含むので、その昔は肥料として貴重なものでした。化学肥料がない時代に、糞は高価な値段で売られて、愛知県の鵜の山では、その代価で小学校を建設したという記録があります。安全で豊かな作物の実りをもたらす糞は、人々にとって、かけがえのない財産だったわけです。このように身近なところに暮らすカワウは、人々とうまく共存することが出来ていたようです。
カワウの分布拡大と被害の発生
 カワウは、1960年代から1970年代に非常に少なくなったことがありました。これは、公害問題などに代表されるような水質汚濁や農薬による繁殖力の低下などが原因と考えられています。全国に繁殖地が3〜5か所にまで減りました。しかしその後、1980年代後半から1990年代にかけて、カワウは絶滅の淵から奇跡的に復活し、各地で生息数が回復してきました。それとともに、これまで見られなかった地域や河川の上流部などにも飛来して、川魚を捕ったりするようになりました。漁業協同組合は、少なくなった魚を補充するために魚を放流していますが、カワウによる河川での魚の被害評価は、実は大変難しい問題になっています。
 また、増えてきたカワウが浜離宮庭園にもすみつき、糞や造巣のための枝折りで貴重なタブなどの樹林が枯れてしまうという樹木被害も起こってきました。
 カワウやウ類の復活は日本だけでなく、ヨーロッパや北米などでも起こっていて、各国でカワウの保護管理を検討する状況になっています。近年のカワウの減少と増加は、カワウのすむ生息環境の変化を示していると考えられます。カワウの減少には、水質汚濁や埋め立てによる採食環境の悪化、その後の増加については、最悪の時代に比べれば、河川や沿岸部の水質の向上や採食出来る魚類の増加など、カワウにとっての採食環境の改善による繁殖の好転が考えられます。
 しかし、カワウの生物濃縮が完全に払拭されたわけではありません。カワウは、今でもダイオキシンなどの化学物質にもっとも暴露されている動物の一つであると言うことです。したがって、今後カワウの分布が広がっていく可能性はありますが、個体数も劇的に増加していくかどうかはわからないのです。もし、再びカワウが減少するようなことがあれば、人間にとって深刻な影響が及ぶことを予告することになるでしょう。
カワウとの共存を考える
 河川の魚を減らしたのも、緑地を減らしてきたのも、もちろんそれはカワウではなく人間です。意外なことに海辺の漁師さんたちに聞くと、カワウが魚を捕っているところで漁をするとたくさん魚が捕れるので、むしろカワウは漁師の味方なのだと言っていました。つまりたくさん魚がいる場所では、人も鳥も魚を分け合うことができるのです。
 内水面漁業とカワウが共存していくためには、昔のように川に魚たちを呼び戻すことが必要です。放流に頼っている釣りのあり方事態が、すでに生態系をゆがんだものにしているからです。見かけだけでなく、魚が海から遡上できる川、繁殖できる川にするためには、水量や水草などを増やしたり、魚道などを確保するなど河川環境の構造的な見直しや復元が不可欠です。また、樹木被害の問題に対しては、他の場所にカワウを誘導したり、有機農業などで、糞を有効利用したりすることも必要かもしれません。また、もっとも被害を受けているのはカワウ自身であり、私たちみんなで水中の化学物質汚染の指標動物として注目していく必要があるでしょう。
 内水面におけるカワウの漁業被害やその対策については、鳥類や魚類の研究者だけでなく、河川の専門家、社会科学的な被害評価の専門家などにも協力を得て、被害の実態やその対策を検討していくべきでしょう。カワウのような広域的に行動する野生動物の調査や保護管理について、行政や民間団体、研究者が力を合わせていくことが期待されます。

全文

 こんにちは、日本野鳥の会研究センターの成末と申します。私の方からは魚の天敵であるカワウについて話しさせていただきたいと思います。実は5〜6年ぐらい前に、全国の漁場管理委員会という、やっぱり全国のこういった水産関係の方の集まりの時に、カワウが問題になっているから話をして下さいって言われたことがあるんですね。その時に話をしたのがきっかけで、その後水産庁と一緒に4年間、カワウの被害評価であるとか被害対策、あるいは採食生態について調べるようになってきております。現在、関東地方を中心にいくつかの、山梨県とか長野県など水産の方にも一緒に調査に入っていただきながら、カワウの被害をどういうふうにして防除していったらいいのかとか、それから今までのお話にあったように、川の環境を良くして魚自体を増やしていくためにはどうしたらいいのかとか、その辺りを他の省庁にも働きかけて今やっているところなんです。それで、ちょっとこんなにたくさんの方がいらっしゃるとは思っていなかったので、野鳥の会の取り組みについて、表裏のチラシといいますか100枚程刷ってきたんですけれども、こういうこともやってますということでご参考にしていただけたらと思います。
 まず、カワウについての共通の認識を持っていただいくということがとても大事だと思いますので、その辺を中心にお話しさせていただきます。ご存じだと即、ますけれども、カワウは非常に大きな魚食性の鳥で、ペリカンの仲間なんですが、魚をよく食べます。私たちが飼育したところ、毎日平均300gぐらい食べていましたので、野外で飛んだり潜ったりしていればもっと食べるかなと。それから、子供を育てれば子供にも餌を運ぶわけです。繁殖期になると真っ黒な鳥というイメージが強いと思うんですけれども、こういう頑とか首のところに白髪が出てくるんですね。それから腰の所にも非常に白い目立った斑が出てきます。それから一時的に嘴の付け根の所に赤い斑紋も出てきます。目はきれいなエメラルドのような線色をしています。オスもメスも同じ形態なんで、見分けるのはとても難しいですね。それからこういう成鳥になるには2〜3年かかるんですけれども、幼鳥はもうちょろとお腹が自かったり全体に茶色っぽかったりしています。ただ、そういう幼鳥タイプでも繁殖に関わる場合もあったりして、非常にそういった意味では羽色の変化が大きくて難しいんですね。
 それから分布なんですけれども、世界中に分布しています。南米を除く全世界に分布していて、特にヨーロッパとか中国、この辺でもやっぱりカワウが増えてきて、漁業との摩擦が起こり始めています。ただ、カワウは全世界にいるんですけれども、日本にいる亜種は日本だけということで保護・保全していくということも大事なことではあります。カワウの繁殖期間について見てみたものなんですけれども、北海道にはいません。青森から九州までいて、以前は青森は春から秋までしかいなかったのですが、最近越冬するカワウも見られるようになってきました。この期間、繁殖しています。それから東京は、春繁殖する群れと秋繁殖する群れの2つのパターンがあって、地域によって違っています。愛知県より南の方にいくと、春先から秋口までと、それぞれの地域によってカ′ワウの繁殖期は違っていて、これはたぶん雛を育てる時にたくさんの魚が必要なんで、その魚がどれくらい捕れるかということと対応しているんじゃないかと。あと、条件が良ければ一年中、換羽の時期を除いて、繁殖できるという習性を持っているんですね。現在、カワウは数が増えてきているとはいわれているんですけれども、もともとは「川鵜」というぐらいで川には普通にいた鳥なんですね。それで1920年代の狩猟統計をみても、長野ですとか栃木ですとか内陸部でウ類がかなりの数、何千羽って狩猟されているんです。そういうことから考えると、当然カワウは普通にいた鳥だというふうに思います。ただ1960年代から70年代にかけて、高度経済成長とか水質汚染、それから浅瀬の埋め立てであるとか、かなりカワウにとっての採食環境が悪化して、それから海外では生物濃縮の影響で、化学物質、PCBであるとかDDTとかそういった農薬が繁殖にかなり影響を与えたということが示されているんですね。それで、たぶん日本でもこの時期に減っているのは、その影響を受けたんだと思います。青森だとか愛知の周辺、あと不忍池などは半野生化状態で保護したりしている場所もあったんですけれども、非常に限られた所にしかいなくなったんです。それで、その後、これは私たちが環境省と一緒にやっている調査なんですけれども、この黒い丸っていうのは繁殖しているところを示していて、小さい丸は棲息を示しています。ですから、この2d年の間に繁殖しているところが広がって、生息地全体が拡かっているので、あちこちの川に現れているという状況があるわけです。たぶん、それぞれの地域では50年以上いなかった所にカワウが来てるということは、たぶん大きな問題なのかなとは思うんですけれども。この図はですね、上野で1970年代ぐらいからずっと、巣の中にいる雛、幼鳥に足輪を付けまして、調査をした結果を示しています。たぶん今までに2千羽とか3千羽ぐらい標識をしていて、その中で回収されたり確認されたのがざっと10羽ちょっとなんですね。だからそんなに遠くには行ってないんだなとは思うんですが、最近は長距離を移動するようなのも増えてきました。これはカワウの数が増えるにしたがって、飛んでいっている所も広がっているのかなと、生息地を求めて外に出ってっているのかなと思いますが。これは東京を中心として見た場合です。また別の研究者ですが、愛知県でも15百羽ぐらい今までに標識していて、それが回収され亘り観察したもので、なかなか観察は見ていただく人がいないと記録はないんですけれども、ほとんどのカワウはかなりその地域で生息している。そんなに広い範囲を行動しているんではないんじゃないかと。ちゃんとした調査はしてないんですけれども、一日の行動範囲としてはこれまでの観察から、関東だと30〜40kmで、愛知では60kmぐらいっていうふうにいわれています。
 それから、なかなか鳥の調査についてはですね、国の研究機関とか地方自治体の研究機関とかほとんどない状況なんで、わりと私どものようなところが鳥の調査をしたりしているんですが、浜離宮庭園のカワウの引っ越しということをやった関係で、関東のカワウについては調査をやっています。この図はですね、最初に1982年ぐらいまでは上野の不忍池1ヵ所にねぐらとコロニーがありました。「ねぐら」というの昼夜寝る場所で、「コロニー」っていうのは繁殖する場所なんですね。ですから、昼間はいろんな所に餌を食べに行くんですけれども、ねぐらやコロニーとしては不忍池1ヵ所だったわけです。それがですね、不忍池の、ご存じだと思うんですけれども、非常に小さい島ですので、だんだん千羽2千羽と増えるにしたがって、徐々に自然増加で外に分散するようになってきました。この円はですね、1984年から1990年ぐらい、そしてさらにここが1991年から1995年、2000年、今現在は、ここから約100km弱あるんですけれども、そのぐらいの地域に集団のねぐらであるとかそれから場合によってはコロニーが作られて、きて、そこからあちこちに飛んでいくということで、以前よりもカワウが餌を取りに行く範囲が広がっているということです。対数で示してありますけれども、ここは1万羽なんですけれども、最初せいぜい百羽2百羽ぐらいの群れだったのがどんどん大きくなって、今、関東全体で冬に1万5千羽ぐらいになってきています。ねぐらの数も30カ所ぐらいになってきているという状況です。
 夏と冬とのねぐらが若干違うんですね。夏はより東京湾岸に集まって、おもに三番瀬であるとか葛西沖とか浅い水辺で採食しています。これはねぐらを示していまして、赤で準りつぶしたところは1990年以前にあったねぐらなんですね。1997年以降は白抜きの丸なんですけれども、そういうのが非常最近に内陸の方に増えています。夏にも増えてきていて。これは冬なんですけれども、よりたくさんの数の群れがですね、内陸の方に冬生息しているということを示しています。
 こういった内陸に入っていくと、放流の時期、特にアユの放流の時期などと重なってくる可能性が、今後心配なわけです。山梨県の富士川流域におけるカワウの数の月別のねぐらにも、る個体数を調べたものなんですが、それまでは、これは水産庁の調査でやったものなんですけれども、山梨県でもアユを4月ぐらいに放流するんですけれども、アユが減ったのはカワウのせいだっていわれていて、調べてみたんですけれども、放流の時期にはほとんど、若干は重なったんですけれども、この時にはほとんどいなくなっていて、アユの問題は冷水病とかそっちの方もあるんじゃないかという話をしています。実険に一番多かったのは12月で、これは8百羽なんですけれども、一つの川の流域に8百羽いるっていうのが関係者にとっては多いのかなと。これは翌年長野県でも同じように調査をしました。こちらは天竜川なんですけれども、全体で最大250羽ぐらいだったんで、流域の長さは違うんですけれども、長野の方が全体の数としては少なかったんですけれどね。ただピークが2月で、少し変化が違うのかなと。この辺はカワウの移動などもあぅて、ちょっとよくわからないところもある−んですけれども、冬にピークがあって春先には減っていくという傾向を示しました。
 それから、これは野鳥の会の人にですね、全部で寧百件のアンケート調査の結果なんですけれども、カワウがいましたかということで聞いたんです。1970年代、その時にはいたのは青森であるとか福島、あと関東、岐阜それから九州と。そういうところにはいたようです。これは会員の年齢によってもなかなか把握するのは難しいんですけれども、いずれにしても1970年代以前車こもかなり広い範囲にわたっていたということです。そして一番減ってしまった1970年代なんですけれども、この時にこの赤い丸ちょっと遠いかもしれませんけれども、こういう赤い丸の所は駆除が始まった県です。でも全体で30%ぐらいとそれはまだそれほど多くなかった。それから1980年代になりますと、カワウの分布はさらに広がってきていて、駆除をする県が全体で6県と増えてきているわけです。駆除数も増えてきています。それから、90年から94年にかけてはこ さらに駆除をするところの数も増えて、1995年以降は西日本を中心に駆除をしている県が増えてきています。この辺の駆除の実態っていうのは、今ここがカワウの駆除が増えてるということで。こちらは昔狩猟をしていた時代の数です。ですから、これはウ類全体なんでカワウもウミウも他のウも入ってるんですけれども、駆除の数はかなり増えてきている状況があります。最近のその内訳を十年ごとにみると、滋賀県とか愛知県で特に滋賀県ですね、たくさん撃っているという状況がありまして、他の県では少し撃云ているということです。滋賀県の状況をもう少し細かくみると、駆除個体数っていうのは青い三角で示していますけれども、これが年々増加していて、年間1万羽単位で撃っているんですけれども、秋の個体数は線なんですけれども、個体数はそれを上回って増えていたり春については上がったり下がったりしている。あと、巣については調査をしていないようなんで、わからないんですけれども、その効果がよくわからないという状況です。それから、これは先程言った標識調査の結果、琵琶湖で20から30羽にリングを付けて観察して、それは先程のと同じ頻度の観察なんですけれども、そのう ̄ちの3羽がですね、長距離移動をしているという状況がわかりました。ですから、ここでのいろんな捕獲圧・駆除圧みたいなものが、分散を進めている可能性があるんじゃないかっていうことを研究者はいっております。
 カワウの被害っていうのがどういうものかっていうことをもう一回考えますと、まず、ねぐらとかコロニーに住み着いてそこで糞を落としたりするので、そこで木が枯れるという浜離宮庭園みたいな問題が起こる。それから内湾とか川の方ではですね、カワウが、本来は水中の有機物水草を魚が食べましてその魚をカワウが食べるということで、それを持ち出すわけなんですけれども。現在のように川に魚が少なく放流の魚が多くなってきますと、その魚を食べること自体が悪だということになる。それから、本当は水質浄化の役割を担うんですが、糞などの流入によって、場合によっては水質汚染の原因だというふうにいわれてしまう背景があります。今後カワウの被書をどう考えたらいいのか、やはりその被害評価ということで、とても難しい問題で頭を悩ませているんですけれども、農地と河川とを比較したときに、農地ですと目的が農業生産のためだけというか、そういう生産の場なわけですよね。ところが河川ではいろんな目的があって、水利の問題、治水の問題それから魚を生産するとか、レクリエーションをするから環境保全をしていくとか、いろんな目的があるわけですね。管理者も国土交通省、地方自治体あるいは漁協などによって行われていると。収穫物についても、農地であれば数を作っていればその数全てが農家のものなんですけれども、川についてはいろんな生産物があって収穫物といってもいろんな多岐にわたっていると。被害を見積もる場合に、農地の動物による食害の評価も難しいとはいわれているんですけれども、更にそれよりも把握が困難なものになっていると。この辺の整理をしていくことが一つ課題なんじゃないかと思います。
 今後、被害対応していくために、この三つのことをやっていく必要があると思っております。まず防除っていうことで、カワウがきても食べられないようにする。それはたぶんいろんな防除の仕方があって、私どもの方で漁協の秋川漁協さんと一緒に、川に紐とかですね、場合によっては綱を張って、それの防除効果というのを測定してみたんですね。だた、そこはあまりカワウのくるところではなかったので、結論から言えばあまり防除の効果はなかったんですけれども、ただ、地形的に秋川のように周りが斜面で山に囲まれているようなところですと、紐を嫌がってカワウがこなくなると、そういうことがどうもありそうなんですね。それからその紐に吹き流しを付けるとかですね、そういったものによって一時的にはカワウがそれを避けるような行動がみられます。ですからそういったものを、放流してから解禁するまでの一ケ月半の間にですね、守りたい時期にですね、いろんな方法を組み合わせて使うというのが一つの方法としてあるかと思います。それから、生息制限。飛来数を減らす。例えば近くにコロニーを作らせないということで、川のそばに作らせないということはあるんですけれども、でもこれもうまくやらないと、さっき言ったように分散を引き起こして、かえって被害を広げてしまう危険性もあるわけですね。ですからこういうものもですね、広域的に行政と連携のもとにやらないと、一カ所だけやっても全然効果がでないと、そういう可能性があります。それから、三番目の資源の確保。魚を増やす。これは私たちが東京湾に行ったときに、漁師さんが「カワウがいるところに行けば魚がたくさん獲れるから、それを目安に漁をするんだよ」っておっしゃってたんですよね。それだけやっぱり資源量が多ければ、共存できるのかなっていうふうに思います。この中にはですね、魚の隠れ場所を増やすとか、防除の所にもかかってくると思うんですけれども、やはり最終的に魚が豊かに住める環境を目指して、水産課の方あるいは漁協の方と今後協力していければなというふうに思っております。ご静聴ありがとうございました。

抱卵中のカワウ
抱卵中のカワウ 2001年3月6日撮影   


福 田
 埼玉の福田と申します。私どもも漁業組合からカワウ、カワウ、下からはブラックバスとかで非常に困っているんですけれども、カワウの天敵とはなんでしょう?
成 末 
 今の状況ですと、天敵はいない状況ですね。ただ、カラスなどは、人間が巣に近づいたりした時に、親が驚いて飛び立ちますので、その時にカラスは雛や卵を食べて、ある程度繁殖を抑えているとい  うことはありました。もともとはたぶん鷲クラスのサイズの鳥が天敵だと思います。

福 田
 蛇とかイタチとかもいくらかは影響しないかな、という気も最近しているんですけれども。
成 末
 むしろ蛇などは、カワウが落とした魚などを食べて、かえって蛇が恩恵をうけるのかなと。蛇がそのカワウの雛を飲み込んだりというのは、親鳥がいますのでちょっと無理だと思います。

成 末 
 ブラックバスのことに関連して、関東ではそれ程ブラックバスを食べてないんですが、カワウの吐き戻しの中に、ブラックバスが入ってくることを観ているんですね。琵琶湖でカワウが増えてきている話は先ほどしたんですけれども、ある時期にカワウの吐き戻しを調べたら、ブラックバスとかハスとか魚食性の魚類といったものがかなり出てきたってI、うことを聞いてますので、琵琶湖では大型魚食性の鳥が増えて、カイツブリとか小型の魚食性の鳥が減っているのは、そういった魚類相の変化を反映している可能性があるんですね。ただその辺の研究は、ぜひ皆さんで進めていだたけるとありがたいかなと思います。

太 田 
 栃木県水産試験場の太田と申します。カワウの仕事を担当しているもので、お伺いしたいんですけれども。最近、夏場でも1、2羽戻らないで居着いているものが増えてきているんですね。観察に行くといつもその場所にいるような感じになってきているんです。そういう鳥っていうのは鳥の行動力、他の鳥とエネルギーというかバイタリティーというかそれが強いのか弱いのか。群れを作って行動している鳥が、そこから外れるっていうのは、何かきっと理由があるのかなと思うんですけれども、その辺のところの知見っていうのは、何かありますでしょうか?
成 末 
 難しいですね。個体数をどうやったらおさえられるかっていうのは、将来そういう問題を考えなくちゃいけないんですけれども、ほっといてもかなり幼鳥は死ぬんですよね。単に駆除すれば減るっていうのはなくて、ほっといても減るときは減る。ですから、かなり個体数を減らすためには、自然の死亡率を上回るようなかたちで努力しないと、減らないっていうことはあります。日本では今は増えている段階ですけれども、デンマークとかヨーロッパの例でみると、ある程度一定レベルでかなり狩猟とか駆除しても増えるということがあって、その辺をコントロールするっていうのは、余程のお金をかけるのなら別かもしれませんけれども、簡単にはできないと思うんですよね。ある広がり、無尽蔵に増えるわけではありませんから、関東でどれぐらい増えるかっていうのは、見通しがつかないんですけれども、内陸にたくさん魚がいて今後カワウがさらに増えていくっていうような感じではないですよね。かなり食べ尽くしていて、そういうのがあっちに行ったりこっちに来たりしなから生息している状況なんで、もう頭打ちの状態になってきているのかもしれないんですけれども。広がっているんですけれども、それ程内陸に豊かな魚類がいるような状況ではないなというのが、私たち素人の見えかたなんですけれども。

長 沢
 養殖研究所の長沢と申します。私はあの鳥による食害に非常に興味があって、少し仕事もしているんで、お伺いしたいんですけれども。被害評価が確かに難しい、それは十分わかるんですが、例えばモデル河川でも水系でもよろしいんですけれど、どのくらい捕食されてるかっていうのは計算されたことはありますか?例えば、1万羽が300g食べると、1日で300kg、1年間で1万トンぐらいになると思うんですけれども。例えば、どこかの河川で、そういう捕食量・一採食量の推定、その河川に魚が何匹ぐらいいてそのうちの何%ぐらいを捕食されたかっていう計算はあるんでしょうか?今食い尽くしてるとかいうお話があったんですけれども、本当に食い尽くしているものなのか、つていうのが気になるところなんです。ただ内田さんがおっしゃるPA、プリコーシャナルアプローチの発想も必要だと思うんですけれども、片方ではその評価の面もなさるべきだと思うんですね。川に100匹いてそのうちの10匹を食べているのかどうかっていう、計算をされているのかを。
成 末 
 その辺のことを、水産庁の仕事に係わっている各都道府県の方に今進めてもらっていますが、魚の資源量っていうのはなかなかわからないっていうことも聞いているんですね。カワウがいるところといないところで、それがどのぐらいの差なのかっていうのを実際に出すのが難しいと聞いています。ただ数字的にはできるんでしょうけれども、例えばカワウがたくさん来れば魚は減るんだ亘れども、その遡上するアユが増えると釣り人が増えるので、結果的にはその釣り人からの遊漁量が上がるという。だから、カワウの食べた量そのものが被害になっていれば、もっとわかりやすいんですけれども、結局漁協のその収入っていうものは、第三次産業のサービス産業に近いですから、そういった補食量が直接の被害量にならなくて、ちょっと間接的に影響するといいますか。その辺でまた、難しいというところに来ています。