神奈川県水産技術センター 内水面試験場

ミヤコタナゴ生態系復元研究 H8

(要 約)
場内の生態試験池において自然状態での繁殖試験を実施し、生残、成長、繁殖状況、食性等について調査を行った。産卵母貝として使用したカワシンジュガイの周囲では活発な繁殖行動が観察され、夏期には無数の稚魚が浮上した。。

「背景・ねらい」
 ミヤコタナゴは国指定の天然記念物であり、絶滅の危機に瀕している。神奈川県の自然水域からは既にその姿を消し、当場をはじめ少数の機関で系統保存のための継代飼育が行われている。しかし、これはあくまで緊急避難的な措置であり、自然水域での個体群復元が緊急の課題となっている。その第一歩として、場内の生態試験池にミヤコタナゴと産卵母貝を放流し、自然状態で繁殖試験を実施し、生残、成長、繁殖状況、食性等について調査を行った。

「方 法」
 場内にある生態試験池のタナゴ池において、1995年6月にミヤコタナゴ1歳魚雌雄20尾ずつ産卵母貝としてカラスガイとマツカサガイを20個体ずつ放流した。さらに、1996年4月にミヤコタナゴ1歳魚雌雄20尾ずつと昨年の生残個体、産卵母貝としてドブガイとマツカサガイを20個体ずつカワシンジュガイを10個体それぞれ放流した。

「結 果」
 1995年9月、ミヤコタナゴの浮上稚魚30尾が発見され、タナゴ池における繁殖が確認された。翌年春までの生残数は、親魚が13尾、繁殖魚が22尾であった。
1996年の繁殖期には、特にカワシンジュガイの周囲で活発な繁殖行動が観察され、夏期には無数の稚魚が浮上した。冬期の取り上げで、1〜2歳魚40尾、繁殖魚522尾を採集した。
 ミヤコタナゴ採集方法は、ビンドウ、四手網、曳き網を使用し、効率的な採集方法を検討ながら、取り上げを行った。ビンドウによる採集では、採集数は初日に多く、採集時間は夕方に多く採集される傾向があった。大型の個体はほとんどがビンドウで採集された繁殖に使用した産卵母貝は再捕率が悪く、生残や成長等の詳細は不明である。

「考 察」
 ミヤコタナゴは、野外池において水質環境や産卵母貝等の条件が整えば、比較的容易に繁殖することが証明された。特に、カワシンジュガイを一定間隔で放養したことが、1996年の多量の稚魚浮上に貢献したものと推察される。また、ミヤコタナゴの効率的な採集漁具としてびんどうの有効性が実証された。本試験の試験結果は、本種の生息地復元における放流試験等に活用したい。

「資料名」
 平成9年度日本水産学会春期大会講演要旨集

「今後に残された問題点」
 放流した産卵母貝の再捕方法の検討
 産卵母貝の繁殖の検討

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