神奈川県水産技術センター 内水面試験場

小田原のメダカ・ビオトープの現状と課題

小田原のメダカ生息地
 環境省絶滅危惧種のメダカは、県内の川や池でときおり見かけることがあります。しかし、残念ながら、そのほとんどは放流による二次的な分布域です。本県では昔からの確実なメダカ生息地は、酒匂川水系の小田原の農業用水路など、ごく一部の水域だけになってしまいました。
 小田原は童謡「メダカの学校」が生まれた場所であり、文化的な意味からも貴重な生息地です。市や市民団体が中心となって、定期調査や観察会の開催、休耕田を利用したビオトープの造成等の保護活動を展開しています。市の魚にも指定され、里親制度も開始されました。メダカを増やして配布し、家庭で飼育してもらっています。
 ところが、この貴重なメダカ生息地の一部は県道建設の予定地になっています。そのため、メダカの市民団体からの要望で、県が主体となり、道路、農業、環境、市民団体、専門家などの関係者をすべて集め、保全を話し合う協議会が結成されました。道路建設によって生じる環境破壊を抑え、メダカをはじめとする生息生物への影響を最低限にする対策が話し合われました。その結果、水路の多自然化やビオトープの造成などの保全策が提言され、実行に移されています。2007年4月にはこの地で、第4回神奈川メダカサミットが開催され、関係の市民団体や行政機関、専門家が集まり、活発な議論が展開されました。その成果は、今後の当地における保全活動に大きく役立つはずです。

メダカ メダカ生息地

メダカ・ビオトープの造成
 小田原市と「酒匂川水系のメダカとその生息地を守る会」が中心になって、メダカが生息する水路に休耕田を利用したメダカ・ビオトープが造成されました(写真3)。ビオトープは二間堰から水を入れ、車堰に排水する構造です。造成後、すぐに二間堰から生物が侵入し、メダカをはじめ多くの水生生物を育む貴重な水域になりました。二間堰と比較しても、種の多様性や生物資源量では、肩を並べています(図1)。特に上流域の浅場では、たくさんのメダカが繁殖して増え、大きな群れを形成し、いつでも「メダカの学校」が見られるようになりました。

 小田原メダカビオトープ ビオトープ生物データ図 


新設メダカ・ビオトープの造成
 残念ながら、二間堰や水田の一部が埋め立てられ県道が整備されます。前述のメダカ・ビオトープも消失します。そのため、メダカをはじめとする生物保全策のひとつとして、2005年の夏、市によって新しくビオトープが造成されました。面積は264.8u、中央に水路が通り、付属する池と支流およびメダカ型の水田から構成され、五間堰と二間堰につながっています。

小田原メダカ新ビオトープ   図3新設ビオトープ


新設メダカ・ビオトープの生物調査 
 本ビオトープの生物相の変遷を調査するため、2004年から曳き網による調査を実施しています。2004年9月の調査では、アオミドロが繁茂した影響もあり水生昆虫が多くて、魚類は少なく、メダカは100尾程度でした。しかし、次第に生物相が豊かになり、現在はメダカ、オイカワ、タモロコ、ドジョウ、カマツカ、ナマズなどが生息し、特にメダカは毎回、千尾程度は確認されています。ビオトープのエリアを、上流、下流、支流および池の4水域に分けて調査し、データを解析しました。その結果、各エリアによって生物相に特徴があり、季節によっても変動することがわかりました。例えばメダカは下流と池を産卵場として利用し、水深のある池を越冬場にしています。
新設ビオトープ生物相変化

今後の課題
 今後もビオトープの生物相を把握するため、調査を継続することが重要です。生き物を育むビオトープは、造成して形ができた時点が終着点ではなく、スタートラインに立ったに過ぎません。水や土砂の管理などの物理的な維持管理や、外来種の除去や増えすぎた生物の調整など、生物相の維持管理が必要です。安定した生態系を構築するためには、手間も時間もかかります。
 小田原のメダカ生息地の保全が成功するか否かは、今後の維持管理体制の確立が不可欠です。現在の協議会を発展させた形で、きちんとした組織の編成が重要で、さらに、行政のバックアップと県民の皆さんのご協力も必要です。

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