淡水魚増殖試験場報告摘要(NO31)
1 淡水魚の雌性化技術開発(ホルモンによるアユの性転換−8)
1 アユの全雌生産に必要な性転換雄魚を作出する条件について、雄性ホルモンとして17α一メチルテストステロンを用い、ホルモンを配合飼料に添加する経口投与法によって検討した。
2 供試魚に雌性発生二倍体魚(全長15.15mm、体重6.04mg、ふ化後24日及び全長20.10mm、体重11・70mg、ふ化後31日)を用い、ホルモン投与量を0・5,1,5,10,15ppm、投与期間を80,90,100,120日で実施した。
3 全長15mmではホルモン投与量0.5ppmと1ppmで投与期間100日と120日、全長20mmではホルモン投与量5ppmで投与期間80,90・100日、ホルモン投与量10ppmで投与期間80,90日、及げホルモン投与量15ppmで投与期間80日で行った。
4 ホルモン投与終了後に成熟期まで飼育し性比を調査した結果は、雌の不妊魚が多く、雄はホルモン投与量0.5ppm、投与期間120日とホルモン投与量5ppm、投与期間80、90日とホルモン投与量10ppm,投与期間80、90日間及びホルモン投与量15ppm,投与期間80日で作出された。
5 雄は作出されたが、作出尾数が1〜2尾と少なく、作出された雄は輪精管のない魚が多く、輪精管のある魚はホルモン投与量10ppm,投与期間90日の1尾だけであった。
6 供試魚に用いた雌性発生二倍体魚の成熟期における性比が全て雌であったことから、ホルモン投与により作出された雄は性転換雄魚と思われる。
2 淡水魚の雌性化技術開発(染色体工学手法によるヤマメの雌性発生−2)
1 ヤマメの第1卵割阻止による雌性発生二倍体の作出の最適加圧時期を見出すため、受精後3、5時間後に加圧処理を行い、発眼率とふ化率を検討するとともに、2回連続で加圧処理を行う有効性についても検討した。
2 試験1−aでは、5区(積算水温78.5℃・h)において、ふ化率1.2%でふ化仔魚の作出に成功した他、2、4区(積算水温55.0、70.7℃・h)でもふ化率0.2、0.3%でふ化仔魚を得ることができた。
3 試験1−bでは、4区(積算水温71.1℃・h)でふ化率4.2%で20尾のふ化仔魚を得ることができた。
4 2回連続で加圧処理を行った試験2では、4区(積算水温69.8℃・h)と5区(積算水温77.5℃・h)でふ化率0.2%であった。
3 全雌アユの作出に関する研究−1
1 前年度に作出した性転換雄魚を用いて、全雌三倍体魚及び全雌ニ倍体魚を作出し、同作出魚をふ化から60日まで飼育した。
2 全雌三倍体魚のふ化率は雌雄混合三倍体魚とほとんど差がなく、また、全雌ニ倍体魚のふ化率も通常ニ倍体魚と差がなかったことで性転換雄魚の精子には問題がなかった。 ‘
3 全雌三倍体魚仔魚期の成長、生残は、ふ化後60日で全長が33.3、36.4mm、体重が86.3、110.9mg、生残率が30.0、40.0%で、雌堆混合三倍体魚と比較すると成長で差がないものの生残では低くなった。
4 全雌二倍体魚仔魚期の成長、生残は、ふ化後60日で全長が27.2〜28.9mm、体重が44.6〜60.Omg、生残率が30.0、48.0%で、前回の仝雌こ倍体魚と比較すると成長が悪く、生残はほほ同じであった。
5 全雌三倍体魚と全雌ニ倍体魚の成熟期の性比調査の結果は、すべて雌であった。この結果、用いた雄は性転換雄魚であることが確認できた。
4 ペヘレイの集約的飼育法(飼育方法の相違が形態、奇形発生に与える影響)
1 集約的飼育法における池の大きさが、ペヘレイ外部形態に与える影響について15tRC池と5tRC池で飼育した魚体を用いて比較検討した。
2 体長に村する体高、眼部体高、体幅、第2背鰭長、胸鰭基底長、腹鰭長、尻鰭長等に差異が認められ、飼育池の大きさが、ペヘレイの外部形態に影響を与えることが示唆された。
3 集約的飼育法における飼育水供給方法が、ペヘレイ外部形態に与える影響について、流水式と循環ろ過式の5tRC池を使用して比較検討した。
4 体長に村する体高、眼部体高、尾柄高、体幅、第一背鰭長、第ニ背鰭長、腹鰭長等に差異が認められ、流水式と循環ろ過式によりペヘレイ外部形態に与える影響が示唆された。
5 脊椎骨異常魚の発生は流水式15tRC池が流水式5tRC池と循環ろ通式5tRC池と比較して多かった。
5 ペヘレイ飽食量試験−2
1 水温18度における体重平均50〜70gのペヘレイ飽食量は、0.69〜0.72%/kgであった。
2 摂餌量、成長量の低下した期間に産卵が観察され、性成熟がこれに影響したものと推察された。
6 アユ種苗生産におけるシオミズツボワムシ投与期間の短縮について
1 アユ程苗生産におけるワムシ投与期間を10日、20日、30日、40日に短縮した場合に、成長、生殖に与える影響を従来から行っている60日と比較した。ワムシ投与期間終了後はワムシに代りに配合飼料(微粒子飼料)を給餌した。
2 ワムシ投与期間を短縮しても成長、生残には特に影響は見出せれなかった。また、奇形魚の割合も1%以下で各区で差は見られなかった。
3 ワムシ投与期間は従来より50日は短縮しても影響はなく、ワムシ総投与量も従来の14.9%で足りることがわかった。
4 ワムシ投与期間を短縮するためには、奇形を予防するため、生物餌料としてアルテミアの投与を従来より早く行う必要があると思われた。
5 種苗生産事業規模におけるワムシ投与期間は安全性を加味し、従来より40日短いふ化後20日間の投与で経費や労力の面でかなりの軽減ができるものと思われる。
7 展示水槽を使用したペヘレイ飼育試験
l ペヘレイ稚魚200尾を縦60cmX横120cmX高さ60cmのアクリル製展示水槽を使用して、150日間飼育試験を実施した。
2 飼育開始時は、水槽に慣れず人影におびえ、壁面にぶつかる個体が多かったが、次第に落ち着き、夏期の水温が30℃以上、冬期は10℃以下、洪水は水道水を使用すると言う過酷な条件で、95%の高い生残率を上げることができた。
8 相模川ペヘレイ放流効果調査
1 河口から寒川取水堰の間の相模川本流にペヘレイを放流して、再捕状況について調査した。
2 放流したペヘレイのうち331尾には青色のリボンタグで標識し、移動状況、再捕率等について調査した。
3 再捕状況から、放流したペヘレイは瀬も通過して上流へ向かい、流れのゆるい場所に定着し、表層を群れで泳ぎ回りながら餌をとることが分かった。
4 標識ペヘレイの再捕率は17・8%で、丹沢湖での調査結果と比較して、高い再捕率であった。
5 消化管内容物の調査から、相模川ではペヘレイは主としてエスリカの蛹と亜成虫を摂餌している事がわかった。
6 塩分濃度を調査した結果、塩分は少なくとも河口から約2.5km上流までは及んでいる事がわかった。
9 相模川水系魚類生息状況調査
1 域山ダムから下流の相模川本流及び日向橋から下流の中津川で魚類、底生生物、付着藻類、河川状況について調査を行った。
2 採捕した魚類は45種、1地点で最多の種類が出現したのは寒川堰下の24種、最少だったのは才戸堰上の3種であった。
3 採捕調査以外で確認した5魚種を加えて、全部で50魚程を確認した。
4 本流と中津川の、平均出現種類数を比較すると本流の方が多かった。
5 本流の各調査地点の出現種類数は夏季と秋季で差が大きく、中津川ではほとんど差がなかった。
6 最も広い範囲に出現したのはオイカワとウグイで、次いでアユであった。
7 夏季と秋季の調査結果を比較すると、夏季の出現種類数が多く、出現した種類についても広い範囲で出現する傾向が見られた。
8 定点での調査結果では、9月に最も多くの魚種が出現し、1月に最も少ない傾向が認められた。
9 採捕尾数割合から、ウグイ、オイカワの2魚種で相模川の生息魚類数の約50%を占め、これに次いで多いアユ、ギンブナを加えて70%を占めると推定された。
10 小沢堰の上流の採捕数は年間を通じてウグイが圧倒的に多くてオイカワが少なく、下流では逆転していた。
11 採捕重量割合から、コイ、ウグイ、ギンブナ、アユ、ゲンゴロウブナ、オイカワの7魚種で相模川に生息する魚類の重量の約90%を占めると准定された。
12 アユ、ウグイ、オイカワについて消化管内容物を調査したところ、いづれも藻類、特に珪藻が多かった。
その他にウグイとそ上期のアユでは水生見虫を多く捕食していた。
13 底生生物は84種出現し、現存量は調査地点の中で小沢堰下が飛び抜けて多かった。
14 付着藻類は62種出現した。
15 河床状況の調査結果では、本流上流部と中津川に大きい石が多く、下流の寒川堰の上流の湛水域の岸辺は泥で覆われていた。
10 芦ノ湖におけるワカサギ資源生態調査
1 芦ノ湖ワカサギの資源生態、繁殖生態を調査した。
2 耳石による日令査定を行った。ふ化盛期は、4月上旬(4月1日、4月10日)と4月下旬(4月15日〜25日)であった。
3 体長と成熟には正の相関が見られ、大型魚から、先に成熟・産卵するものと思われた。よって、放流用卵確保のための、芦之湖産親魚の採捕時期を早めることが有効と思われた。
11 ワカサギのALC標識
1 ワカサギの発眼卵、仔魚、稚魚期におけるALC染色を行い、処理時間、濃度、保有期間及び標識部位について検討した。
2 発眼卵期に100ppm、24時間で染色し、ふ化後234日までの稚魚においてALC標識を確認できた。また、55日以降は標識確認を確実にするため、耳石の研磨が必要であることがわかった。
3 仔魚期においては、耳石では50ppm、24時間、胸鰭担鰭骨では400ppm、5時間以上で標識が可能であった。しかし、保有期間、へい死率については再検討する必要がある。
4 稚魚期では、50ppm、6時間で耳石への標識が可能であったが、鱗への標識は3日後に消失した。
5 仔魚期、椎魚期ともALC染色による標識はリング状であった。また、二重染色が可能であることから、多重標識することにより放流群の識別手段として有効と判断された。
12 ミヤコタナゴの近交劣化に関する研究−1
1 ミヤコタナゴの継代飼育に伴う近交劣化を調べるため、当場と東海大で継代飼育した親魚間で交配試験を行い、採卵数やふ化率、浮上率を比較検討した。
2 総採卵数では淡水試の雌親魚が東海大の雌親魚よりも多かったが、1雌個体あたりの平均採卵数では有為差は認められなかった。
3 純系統区と両系統の交配区において、ふ化率と浮上率で顕著な差異はなく、近交劣化は本試験結果から認められなかった。
13 横浜市におけるゼニタナゴの生息
1 横浜市内のため池において魚類採集調査を行い、全国的な希少種であるゼニタナゴの生息を確認した。
2 採集したゼニタナゴは18尾で、当県における現存の唯一の個体群と推定されたので、淡水魚増殖試験場に移収した。
3 ため池ではタイリクバラタナゴが大量に増殖する等、ゼニタナゴの生存が脅かされており、今後も調査を経続する必要がある。
14 丹沢山麓における渓流魚の分布−1
1 丹沢山塊における渓流魚の分布を把握するため、魚類採集調査と環境調査を実施した。
2 相模川水系の支流、早戸川水系では、ヤマメ、アブラハヤ、カジカの3種、串川水系ではアブラハヤ、カジカの2種、道志川
水系では、ヤマメ、アブラハヤ、カジカの3種、神ノ川水系ではイワナ、ヤマメ、カジカの3種、全体でイワナ、ヤマメ、アブラハヤ、カジカの4種を採集した。
3 酒匂川水系の支流、中川川水系ではイワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカの4種、世附川水系はヤマメ、カジカの2種、全体でイワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカの4種を採集した。