神奈川県
水産技術センター
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研究成果
魚道研究
海の漁は潮や天候などさまざまな影響で好不漁があります。しかし、相模湾の入口に巨大な建造物が作られたため、サバやカツオがまったく回遊してこなくなる、という事態はまずないでしょう。しかし、川ではこういうことはさして珍しいことではありません。
川の中下流では取水せきが作られ、山奥では砂防えん堤が作られて魚のそ上をさまたげています。アユやウナギのように成長の場を求めて川をそ上しなければならない魚はたくさんいます。これらの魚は「せき」が作られると上流にはいけなくなってしまいます。
それだけではありません。例えばアユは川底の小砂利がふかふかした瀬に産卵しますが、このような条件の場所は中流にあります。その下流に「せき」ができれば、産卵できません。「せき」の上流になんとかして魚をのぼらせる工夫が必要です。
そこで考えられたのが魚道です。魚道は人間でいえば階段、「はしご」と同じです。日本では明治3年(1870)に十和田湖に魚道のような構造物がつくられたのが最初とされ、以来約130年間にわたりさまざまなタイプの魚道が考案されてきました。
エレベーター式の機械で魚を持ち上げるものも考案されましたが、もっとも代表的なのはプールを段々にならべた、棚田のような階段式の魚道です。これは神奈川県内でもいたるところでみられます。しかし、今ある魚道を点検すると残念ながら合格点を与えられる魚道はごくわずかです。作る位置が悪く、魚が魚道入口に到達しにくい構造だったり、プールの水深が浅すぎたり段差が大きすぎて魚が次の段ヘジャンブできなかったりする魚道が多いのが現状です。また、比較的よくできた魚道でもアユ等の遊泳力抜群の魚を対象に設計しているため泳ぎの下手なハゼの仲間やカジカ、エビ、カニなどはうまくのぼれないのです。人間社会で体力抜群の人しかのぼれない階段を作ることなどありえません。お年寄り、幼児、車いすの人など、その道を通るすべての人が上れる工夫をするでしょう。同様に、河川のすべての水生生物が自由にぞ上できる魚道が必要です。
最近は建設省をはじめ河川管理者の考え方が変化し、生態系に配慮した河川管理がおこなわれるようになりました。大変ありがたいことです。魚道の構造も専門家の意見を聞いた上で模型実験をおこなってから工事する例も増え、すぐれた魚道が作られるようになりました。もちろん「せき」を作らないのがもっともよいのですが、安全で便利な生活を望んで、やむをえず「せき」を作る場合、その対策としてすぐれた魚道が作られるようになったのはよいことと思います。
内水面試験場では、これまでも魚道の研究を行うってきましたが、今後さらに力を入れておこないます。昨年は底生魚をそ上させるための魚道構造の実験をおこないました。などというと難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は簡単なことで、階段式魚道の底に直径10〜20cmくらいの玉石を入れただけです。簡単な工夫ですがこ実験の結果カジカやハゼの仲間などに抜群の効果があるという結果が出ましれこれは相模川を管理する相模総合整備事務所が考案して、実証実験を内水面試験場でおこなったものです、これからはこういう土木事務所等河川管理者と内水面試験場の協力がますます大事になると思います。
もうひとつ大事なことがあります、魚道は作っただけではまだ仕事は半分しか終わっていないということです。石やゴミなどで魚道が埋まったり、壊れることもあります。魚道の状態をいつもよくみて機能を保つ必要があります。手入れが必要なのです。大変なことですが、もともと自由に魚が往来していたところに障害物を作ったわけですか、これはしかたのないことです。この日常の監視には魚や川のことに精通している河川漁業関係者の協力も欠かせないと思います。
このような努力をしなければやがて河川には魚の姿が消え、人々の関心は河川に向かなくなり、川は荒廃します。河川で魚をとる人にとってはもちろん大変困った事態になりますが、同時に忘れてはならないのは川は海に注ぎ、多くの養分を運び、沿岸域の資源を支えているということです。
河川の荒廃は海の沿岸の荒廃に直結します。これまでも川の魚を守るためのさまざまな努力がおこなわれ、結果として川はもちろん、森を守り、海も守ってきたのだと思います。
古いタイプの階段式魚道
新しい魚道(アイスハーバー式)
水総研情報(1999.VOL.1) 平成11年3月25日発行
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