神奈川県水産技術センター 内水面試験場
アユの日記を読む−耳石形態による海産アユと人工産アユの判別について−
[目的]
河川においてアユ資源を有効に利用・管理するには、アユの種苗を識別し、調査によってその特性を明らかにすることが重要である。
これまでのところ、種苗の識別には、遺伝学的な集団解析や標識放流など、手間とコストの掛かる方法が用いられてきた。
一般的に、耳石には個体が生まれてから死ぬまでに経験してきた環境の履歴情報が、日記のように日単位で刻まれる。
そこで本研究では、海産アユと人工産アユの成長環境の違いに注目し、耳石を用いた簡単な個体判別の方法を明らかにすることとした。
また、その方法が実際の河川調査に応用できるかについても検討することとした。
[ 方法 ]
海産アユは、1999年3月8日に相模湾で漁獲された稚アユ60尾、同年3月23日に相模川で採捕した遡上アユ31尾の計91尾を用いた。
人工産アユは、当試験場の継代飼育アユの親魚62尾と、ふ化後70〜150日の稚アユ90尾、群馬県水産試験場の継代飼育アユ親魚46尾の計198尾を使用した。
これらの魚から耳石を取り出し、外部形態や日周輪の形成などを、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡により観察した。
[ 結果 ]
海産アユと人工産アユ親魚の耳石には、2タイプの形態が認められた。
つまり
・ 表面は滑らかで、周縁は丸みを帯びる。日周輪は核を中心に同心円状に形成される。光学顕微鏡下では不透明に見える(→Aタイプとする)
・ 表面には波状の構造が見られ、周縁は細かい突起に富む。日周輪は湾曲・集束し、不規則に形成される。光学顕微鏡下では透明にみえる(→Bタイプとする)
これら2タイプの出現率はそれぞれ、海産アユでAタイプ耳石が100%、人工産アユ親魚でBタイプ耳石が100%であった。
このことから、耳石の外部形態を観察するだけで、海産と人工産の個体判別が可能であることが示唆された。
一方、ふ化後70〜150日目までの人工産稚アユではAタイプ耳石が20〜80%出現した(図1)。
また、Aタイプ からBタイプへ変形したことを示す耳石も認められた。
よって、人工産アユでは、稚アユ期にAタイプ耳石が出現してしまうものの、それらは成長に伴って、Bタイプ耳石へ変形してゆき、親魚ではBタイプ耳石のみになると考えられた。
このことから、耳石形態による判別方法を実際の河川で応用するには、人工アユを放流する際に、その放流種苗におけるBタイプ耳石の出現率を、標識率として捉えておく必要があると考えられた。
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| 図1 人工産アユにおける2タイプの出現率 |