神奈川県水産技術センター 内水面試験場

アユ種苗総合対策事業 

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 アユは神奈川県における内水面漁業において主体をなす重要な魚種ですが、平成9年は天然そ上するアユが少なく、非常に厳しい年になりました。
 このアユ漁をある程度維持していくには、やはり種苗放流に頼らざるを得ません。国では、このアユ種苗についての総合的な調査を平成9年度より5カ年間全国内水面漁業協同組合連合会に委託し、神奈川県の他6県(山形、新潟、富山、福井、静岡、滋賀)が調査を行うことになりました。
 内容としては、琵琶湖産・人工産・海産の各種苗について、それぞれの問題点を総合的に調査・検討することにより、生態的特性及び水域特性に配慮した安定供給システムの確立と調査方法の確立、養殖アユ種苗の健苗飼育技術の確立等を行うための基本的事項についての調査検討です。
 ここでは、神奈川県の調査研究計画の概要を紹介します。

 琵琶湖産より海産の方が友釣りで釣れる
行動特性調査
 由来の異なる種苗を用いて、漁業者や釣り人の協力を得ながら標識放流調査を実施することにより、種苗種類毎の特性を明らかにするものです。 平成9年度に神奈川県内水面漁業協同組合連合会が行った標識放流結果を紹介します。
 アユ解禁の10日前、琵琶湖産、人工産、海産種苗各1,000尾(全長約12cm)にビニールリボンタグを付けて相模川に放流し、釣り人からの報告を待ちました。その結果、再捕率は海産が8%で最も高く、次に琵琶湖産4.1%、人工産が3.7%でした。釣獲方法別に見ると、全体的にコロガシ釣りの割合が高いものの、人工産はコロガシ釣り、琵琶湖産はドブ釣り、海産は友釣りの割合が高いなど、種苗間で釣獲割合に差が生じていました。今後はより詳細な試験設定を行い、種苗の釣獲特性を明らかにしていく予定です。

  種苗の差は氏か育ちか?
生化学的特性調査
 放流用種苗は、琵琶湖産・人工産・海産の3種類がありますが、放流にいたるまでの生育環境は皆異なっています。餌料生物や飼育環境が異なれば、放流時における基礎体力等の差が予想されるので、種苗差を比較する検討資料として放流種苗毎の体成分等生化学的特性を明らかにするものです。
最近の研究ではアユ血液中の過酸化リン脂質は、同じ養殖魚の中でもニジマスやブリ、マダイ、ヒラメに比べ非常に高い含有量を示していることが分かっています。さらに、琵琶湖産・人工産・海産アユについて調べたところ、他魚種に比べ全て高い値を示しながらも、種苗間で差が生じていました。
この過酸化リン脂質は、細胞膜を脆弱化させ冷水病を始めとする感染症に対する抵抗性を低下させているのではないかと推定しています。
 琵琶湖産のアユは、従来は流入河川や湖岸に接岸してきたアユを再捕して放流していましたが、近年ではほとんど蓄養したものに変わっています。
この蓄養の影響は魚体の成分に反映され、種は琵琶湖産であっても成分的には人工産と変わりがないこともあり得ます。
 このように、体成分分析を出発点に今までの調査結果などとの関連を考えて行きます。
再生産系統調査
 近年の研究では、ミトコンドリアDNA解析により、琵琶湖産種苗を河川に放流しても翌年湖産系のアユは遡上していないということが判ってきました。また、人工産種苗は継代飼育を続けるうちに遺伝資源の単型化が進み、天然水域での再生産に及ぼす影響も危惧されています。
 そこで、再生産期待型の増殖事業の実現のために、ミトコンドリアDNA分析等の手法を用いて、再生産へ寄与している系群を明らかにし対策を検討していきます。
また、河川を遡上するアユのふ化日を調べることにより、アユの流下時期と加入資源との関係を調べていきます。

 川に遡上するアユは何尾か?
 放流種苗の効果を把握するための基礎資料として、天然種苗の資源添加量を調査するものです。
方法としては、相模川の河口から上流約6キロメートルに位置する寒川取水堰魚道に遡上するアユをビデオで収録し解析していきます。

 アユの由来の見極め 
琵琶湖産アユと海産アユ、人工産アユでは、外部形態(耳石形態、側線上横列鱗数、鱗相等)やふ化日に差異が生じることが知られている。種苗の由来が個体識別できれば、河川における産卵群の産地別割合の算出等が可能となるので、耳石形態を調べることにより神奈川県の各種苗の指標値を明らかにする。

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