アユは神奈川県における内水面漁業において主体をなす重要な魚種ですが、平成9年は天然アユが少なく、非常に厳しい年になりました。このアユ漁を維持していくには、やはり種苗放流に頼らざるを得ません。今回、(財)神奈川県内水面漁業振興会が昭和63年から行ってきたアユの標識放流試験結果をまとめました。これらの成果を元に、これからより良い放流手法を皆さんと考えていきたいと思います。
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「琵琶湖産アユが釣れなくなってきた」 平成2年からの産地別再捕率を図1に示しました。平成2〜4年頃に比べ、近年再捕率が半分に落ちています |
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「琵琶湖産アユがなわばりをつくらなくなった」
琵琶湖産種苗の漁法別再捕率を図2に示しました。 近年泳がせ釣りがはやり、なわばりをつくっていないアユでも釣れるそうですが、友釣りの再捕率の低下はなわばりをつくらなくなっていることと関係がありそうです。 |
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「人工産種苗が琵琶湖産種苗に追いついた」 人工産種苗は、コロガシ釣りで良く釣れるが友釣りではあまり釣れないという評価でした。 しかし、友釣りの産地別再捕率(図3)を見ると、琵琶湖産種苗や海産種苗と変わらない再捕率となっています。年々再捕率も向上し、年によっては最も再捕率が高くなることがありました。 |
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「アユは放流場所の近くで釣れる」
平成7年以降は20カ所に分散して放流しています。平成7年以降の再捕結果から放流場所別再捕状況を調べたところ、ほとんどの場所で放流した地点で再補されています。特に人工産種苗の移動は少なく、放流場所は良い漁場に分散して行うのが良いようです。 |
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「元気なアユは8日間で15km移動した」 アユは放流した場所の付近でほとんど釣られていますが、7%ぐらいは5km以上移動しています。 |
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「解禁後1週間で約6割釣られている」 最近3年間の再捕された日を整理すると図4になります。 |
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「放流するなら20g以上」 平成元年には、種苗の大きさ別標識放流を行っています。この結果では10gの魚と20g以上の魚では3倍近い差が出ていました。 もちろん標識を付けることによる魚への負担は小さい魚ほど大きいため、標識放流結果と実際の放流とでは違います。 図6に平成6から9年に行った試験で、種苗別の体重と再捕率の関係を示しました。 やはり20g以上の再捕率が高くなっています |
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「解禁直後にかなりの魚が釣られてしまう」と言うことは水温が上昇し石にはえる苔の生産力が上がった頃に魚が少ないことになります。これでは川の生産力を無駄にしていることになります。
平成5年には追加放流の検討をしています。解禁前の5月12日と解禁後の6月28日に同じ数放流しました。表2を見て下さい、効果は歴然! 追加放流の再捕率は非常に高くなっています。
放流手法の安定した最近4年間の結果を見ると再捕率は、良い種苗で10.6%、悪い種苗では4%に満たないこともあります。
種苗放流は、たくさん放流すれば良いとは限りません。良い種苗であればそうでない種苗の半分以下の数で同じ効果が期待できます。
また、なわばりをつくりやすい種苗や良く動く(移動する)種苗など、特性に合った放流方法を検討することで放流効果がより良くなると思われます。
種苗の産地や大きさにより、また年によって種苗の放流効果がいろいろ変わることがわかりました。しかし、再捕率を経年で見ると、平成6年は極端に再捕されない年でした。この年は異常渇水の年で川の水が極端に少なかった年です。平成9年も天然アユがほとんどなく、夏に来た2回の台風以外はほとんど雨もないなどアユの漁獲が落ち込んだ年です。種苗放流はこうした河川環境に左右され易く。河川環境の保全が放流効果を高めることにもなります。
あとがき標識放流結果は年により大きく変わります。平成8年に再捕率が一番悪かった海産アユが平成9年には一番良くなったり、琵琶湖産アユが釣れなくなってきたことなど、この10年の調査結果をまとめることによりわかりました。この大変な労力を必要とする調査を長年続けている(財)神奈川県内水面漁業振興会にあらためて敬意を表します。
「漁協だより」第7号(平成10年4月1日発行)に図と表を追加し、再編集しました。